「カメラはつけたのに、映ってなかった…」
「肝心の瞬間が死角に…」
防犯カメラを設置したものの、レンズ角度や撮影範囲を正しく理解していなかったために、想定していた効果が得られなかったケースは意外と多いものです。
今回は、防犯カメラ初心者でも失敗しない“レンズ角度”と“撮影範囲”の基本的な考え方と注意点を、やさしく・専門的にご紹介します。
レンズ角度=「見える広さ」だけではない
レンズの画角とは?
防犯カメラのレンズ角度(画角)は、**カメラが一度に映せる“範囲の広さ”**を指します。これは「水平画角(°)」として表示されることが多く、数値が大きいほど広い範囲をカバーできます。
レンズの画角 | 撮影範囲の特徴 | 適した用途 |
---|---|---|
約30〜40° | 望遠・狭い範囲 | 出入り口の顔認識など |
約60〜90° | 標準的な範囲 | 室内の防犯、駐車場など |
約100〜180° | 広角・広範囲 | オフィス全体、広い敷地など |
しかし、“広い=万能”ではありません。
広角レンズの落とし穴
一見便利に思える広角レンズにも注意点があります。
- 対象物が小さく写る(人物の顔が判別できない)
- 画面の端で歪みが生じやすい
- 死角が意外と多く残る(特に上下方向)
つまり、「全体が映っている」ように見えても、細部の確認には不向きということもあるのです。
焦点距離とズームの違いも要チェック
レンズには「焦点距離」という概念があり、これが**“近くを広く映す”か“遠くを狭く映す”か**に影響します。
焦点距離(mm) | 特徴 |
---|---|
2.8〜4mm | 広角で全体を映す(短距離) |
6〜12mm | やや狭めでピンポイント(中距離) |
16mm以上 | 望遠寄り。遠くをズーム(長距離) |
特にズーム可能なバリフォーカルレンズでは、設置後に撮影範囲を微調整できるため、設置現場での柔軟性が高まります。
撮影範囲の“盲点”を見逃さないための4つのチェックポイント
1. 死角の有無を真上から確認
カメラは「正面」には強いですが、カメラの真下や天井近くは死角になりがちです。
特にドーム型のカメラでは、見下ろす角度が浅くなると真下が映らないことが多いので、取り付け位置に注意が必要です。
2. 夜間の赤外線照射範囲と角度
「昼間は映っていたのに、夜になると真っ暗」というトラブルもよくあります。
これは、赤外線LEDの照射範囲がレンズの画角よりも狭いために起きることがあります。
照射角とレンズ角度を一致させるか、照射範囲が広いモデルを選ぶのがコツです。
3. 高さと距離のバランス
カメラの取り付け高さと、対象エリアまでの距離の関係で、以下のような問題が起きることがあります。
- 高すぎる → 人物の顔が映らない
- 低すぎる → 破壊・盗難のリスク増
- 遠すぎる → 解像度が足りない
一般的には地上から2.5m〜3.5mの高さが推奨されています。
撮影したい範囲に合わせて、角度(チルト)調整可能なカメラを選ぶのも重要です。
4. 屋内外の反射・逆光の影響
- 屋外:太陽光の逆光で人物が真っ黒になる
- 屋内:ガラス反射や蛍光灯の映り込みで映像が見えづらい
これを防ぐには、WDR(ワイドダイナミックレンジ)搭載のカメラや、設置角度の工夫が必要です。
シーン別おすすめの撮影角度例
シーン | おすすめレンズ角度 | 理由 |
---|---|---|
自宅玄関 | 60〜90° | 顔認識とドア周辺の確認に最適 |
店舗入口 | 90〜120° | 出入りの把握+死角カバー |
駐車場 | 100〜180° | 車両全体+隣接エリアをカバー |
倉庫通路 | 30〜60°(望遠) | 狭い通路での長距離撮影に適す |
実際の失敗例と対策(福岡の事例より)
例1:博多の飲食店
状況:出入口に広角カメラを設置したが、カウンター席の様子が映らない
原因:角度は広いが、奥行き方向に弱かった
対策:2台目のカメラを対角線に追加し、カバー範囲を補完
例2:福岡市の集合住宅エントランス
状況:天井埋込カメラの真下に宅配ボックスがあり、不審者が死角に入っていた
原因:真下の死角+夜間の赤外線不足
対策:レンズ角度を変更+照明付きカメラへ交換
選び方のポイント:角度と用途のマッチングが命
カメラを選ぶ際には、以下の要素を“セット”で考えるのが大切です。
選定要素 | 考慮ポイント |
---|---|
レンズの画角 | 撮影したい範囲の横幅・奥行き |
焦点距離 | 撮影対象までの距離(広角 or ズーム) |
解像度 | 被写体の細部まで確認したいか |
赤外線照射角 | 夜間の視認性が必要か |
設置高さ | 撮影したい“高さ”に合っているか |
まとめ|「なんとなくの設置」が一番危ない
防犯カメラのレンズ角度や撮影範囲は、防犯性能を左右する最重要ポイントのひとつです。
見落としやすい“死角”や“範囲の過不足”を放置すると、いざという時に映っていなかった…という重大な失敗につながりかねません。
カメラ選定時や設置前には、ぜひ今回紹介したポイントをチェックしてみてください。